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Halvdan Viking ハルダン/半人前のヴァイキング

スウェーデン映画 (2018)

児童文学作家マッティン・ビードマルク(Martin Widmark)のHalvdan Vikingシリーズに着想を得た作品。このシリーズは、2011年から2018年の間に10冊が刊行されている。といっても、ハリーポッター・シリーズのように順番に映画化していく訳ではなく、映画の内容も、原作が直接反映されている訳でもない。重要な登場人物は同じで、ハルダンは足が悪い。ただ、ハルダンと協力するメイヤは、西の村の族長のオーラリックの娘ではなく、東の村の族長ラグナルの姪。2人の族長の怖い奥さん2人は、やはり重要人物のようで、代表的な登場人物を集めた右の挿絵は、この6名から構成されている(ハルダン、メイヤ、ラグナル、奥さんのフリーダ、オーラリック、奥さんのクリスティーナ)。ここには何故か入っていないが、ハルダンの養い親の鍛冶屋のビヨンもちゃんと登場する。映画は、イェーテボリの80キロ北北東にあるヴァルゴン(Vargön)の周辺で撮影された。原作が有名なだけに、セットにはお金がかかっている。ヴァルゴンの代表的な風景を下に示すが、森と湖が美しい。以前紹介した、『Dans la forêt(森の奥深くで)』の舞台となったのは、同じヴェストラ・イェータランド(Västra Götaland)県だが、もう少しノルウェー国境に近い所。でも、風景はよく似ている。

深い谷に村の真ん中を貫かれたヴァルシヤーダ村は、立派な首領が生きていた間は1つにまとまっていた。しかし、首領が死に、権力のシンボルだった斧がなくなると、2人の息子の間で、“どちらが盗んだか” で争いが始まり、村は谷で分断され、東と西に分かれてしまった。映画の主人公、半人前のバイキング、12歳のハルダンが住んでいるのは、東の村。父は8年前に航海に出たきり戻って来ないし、母も病死したため、村の鍛冶屋のビヨンが面倒を見ている。ハルダンは片足が悪く、びっこを引かないと歩けない。そんなハルダンをバカにする村のNo.2や、その息子かもしれない、図体が大きいだけの意地悪坊主もいる。そんなある日、ハルダンが、父を偲んで作った模型の木の舟を川に浮かべて遊んでいると、舟が葦の中に入り込んでしまう。何とか出そうとしていると、矢が立て続けに飛んできたので、びっくりして川に転落する。ハルダンは泳げないので、溺れそうになり、それを見た同じ年頃の女の子が助けてくれる。女の子は、西の村の族長の娘メイヤで、冗談で矢を放ったのがこんな結果となったので詫びる。これが2人の馴れ初め。この時は、メイヤを探しにきた兵士に邪魔され、ハルダンは相手の名前すら聞けなかった。そこで、もう一度会いたいと熱心に考えた末、丘の上に行って狼煙(のろし)を上げようとする。しかし、草に点けた火が燃え拡がり、草原が火事になりそうになる。幸い、それに気付いたメイヤが駆け付け、火を消してくれる。こうして、奇しくも、2人は再会を果たすことができた。その場で、ハルダンは、東の村に食べ物がほとんどないことを話す。それを聞いたメイヤは、ハルダンを西の村の食料貯蔵庫に連れて行き、2人で運べるだけの食べ物を、東の村の森の中の洞穴に持って行って隠す〔それをどうするつもりなのかが、さっぱり分からない〕。食料運びは1回だけでなく、貯蔵庫が空になるまで続く〔何のため?!〕。その頃、西の村にはザクセンから来た修道士が、キリスト教を族長に押し付け、洗脳しようとしていた。そして、反撥するメイヤをザクセンの修道院に入れて教育を施すよう族長を説得する。それを知ったメイヤは村を抜け出し、ハルダンと一緒に舟に乗って逃亡する。しかし、ハルダンの操舵は冴えず、それが原因で2人は喧嘩し、おまけに、舟は西の村の入江の奥に漂着する。2人が逃げている間、洞穴に隠しておいた食料が、東の村のお節介娘に見つかり、東の村の族長は、神の贈り物だと勝手に解釈して全量を村に運ぶ。食料は、飢えた村民によって跡形もなく奪われる。一方、西の村では貯蔵庫が空になっていることが分かり、東の村が盗んだと思い込む。そこから、2つの村の族長、悪魔のような修道士、ハルダンとメイヤが絡む大騒動が持ち上がる…

主役のハルダンを演じているのはVilgot Hedtjärn。映画初出演で、他に出演作はない。あるスウェーデン語のサイトに、①撮影は、2018年8月14日~9月19日、②Vilgot Hedtjärn と、メイヤ役のEllinea Siambalisは共に12歳と書かれていたのが、唯一の情報。

あらすじ

映画の冒頭、状況の説明が入る。「昔、昔、一つの大きな村ヴァルシヤーダ(Valsgärde)があった。村の真ん中には深い谷があり、橋で結ばれていた」(1枚目の写真、谷の両側に家の絵が描いてあり、その下に橋も描いてある)「夏になると、村人は収穫を分け合い、冬には助け合って生き延びた。村の首領は、魔法の斧のお陰で、北の村々から怖れられていた。だが、首領が死んだ後、ある日、斧が忽然と消えた。首領の息子ラグナル(Ragnar)とオーラリック(Alarik)は、斧を盗んだと責め合った。そして、橋の左右に分かれて戦いを始めた。剣や斧の戦いのさ中、橋は崩れ、東の村と西の村に分かれた」(2枚目の写真)。ここまで話が進んだところで、この解説はナレーションではなく、鍛冶屋の2人が東の村の子供たちに、人形劇の形で “昔話” を語っていたことが分かる。

そこに、東の村のNo.2で軍事教練係の男が ハルダンの襟をつかんでやってくる。「こいつを、川の対岸で捕まえたぞ」。そう冷たく言って鍛冶屋に渡す。さらに、「ガキどもに下らん話などする暇があったら、チンバを見張ってろ」と、古代なので平気で侮蔑的表現を使う(1枚目の写真)。嫌な男がいなくなると、ハルダンは、父親代わりの鍛冶屋に、「きっと信じないよ。僕、溺れかけたら、可愛い女の子が、突然現れたんだ」。鍛冶屋の相棒が、「溺れたフリか? そいつは効くからな」と茶化す(2枚目の写真)。父親代わりの方は、責任感があるので、「2人とも、真面目に!」と気を引き締める。「お前は、自分の命を危険に曝したんじゃぞ。もし、西の奴らに捕まったら、どうなってたと思う?」と叱る。そのあと、風邪を引くからと羽織るものを着せると、後ろから抱きしめ、「川にはもっと気を付けると約束しろ。お前は泳げんのじゃ。わしは、お前の親爺さんに 面倒を見ると約束した」。「僕は、何でもできるんだよね?」。「もちろんそうじゃが、お前を失いたくないんじゃ」。鍛冶屋は、ここで話題を変える。「女の子とは、どうやって会ったんじゃ?」(3枚目の写真)。ここから回顧映像が始まる。

「新しい舟を進水させてた」。「2本マスト?」。木で作った模型の舟には、小さなバイキングの兵士も乗っている。マストには布の帆まで付いている。ハルダンは、「父ちゃんによろしくね」と、舟に向かって手を振る。「舟は、葦の中に入って動けなくなっちゃった」。ハルダンは、丸太の倒木の先端まで歩いて行き、細い枝を持った手を思い切り伸ばして、何とか舟を葦の茂みから出そうとする(1枚目の写真、矢印は舟)。その時、矢が3本飛んで来て 近くの木の幹に刺さり、驚いたハルダンはバランスを崩して川の中に落ちる。矢を放った女の子は、嬉しそうに笑っているが、ハルダンが泳げずに溺れそうになると(2枚目の写真)、川に入ってきて助けてくれる(3枚目の写真)。女の子は、「ごめんね。冗談のつもりだったの」と詫びる。ここで、一旦、現実に戻り、鍛冶屋が 「女の子の名前は?」と訊く。「さあ」。「名前ぐらいあるじゃろ?」。

場面は、先ほどの邂逅(かいこう)の後。西の村の兵士2人が、族長の一人娘を探して森の中を歩いている。「出ておいで。どこにいるんだい?」。女の子は、ハルダンを大きな岩の陰に隠し、「あの人たちが行っちゃうまで、動いちゃダメよ」と言い(1枚目の写真)、岩陰から飛び出そうとするが、ハルダンも必死で、「どうやったら、東の村に戻れるの?」と すがるように訊く。「渡る場所があるわ。急流で狭くなった所。誰かに教えたら、命はないわよ。分かった?」と、早口で答える。兵士の1人が、立ち止まって、「東の奴らの悪臭がするぞ」と言う〔①交流がないのに何故分かる? ②西と東で何故臭いが違う?〕と言う。兵士は、臭いのする岩の方に、剣を抜いて近寄って行く。ハルダンには、その言葉が聞こえていたので、気が気でない(2枚目の写真)。その時、女の子が2人の兵士の前に姿を見せる。女の子は兵士と一緒に帰って行くが、 “もう大丈夫” とでも言うように、一瞬 ハルダンを振り向く(3枚目の写真、矢印)。

その後のシーンで、東の村の族長ラグナルの家の中が映る。結構騒々しい。そこに入って来たラグナルは、「どうかしたのか?」と奥さんに訊く。「あんたの子供たちは、父親が食べ物を与えないもんだから、森で食べてきたのよ」と、つっけんどんに答える。「何だ、森だと? 何を食べたんだ?」。小さな女の子が、「白い点々のある赤いきのこ」と答える(1枚目の写真)。「ベニテングタケ〔毒性はさほど強くない〕だ。食べたのか?」。「あたし 吐き出したから、みんながどんなだったか見てた」〔食べてから20-30分で瞳孔が開き、眩しくなり、弱い酒酔い状態となる/食べすぎると腹痛、嘔吐、下痢を起こす〕。「良かったな、ヒルダ」。奥さん:「村中が飢えてるわ。弟さんに お願いしたら?」。「絶対にせんぞ。斧を返すまでは、顔も見たくない」。一方、鍛冶屋の家では、ベッドに横になったハルダンが、「ビヨン、父ちゃんの地図 正しいと思う?」と訊く。「絶対じゃな。自分の庭のようにご存じじゃった。お前のために描かれたんじゃ。だから、お前なら あの方の居場所が分かる」。「なぜ、一緒に連れて行ってくれなかったのかな?」。「他に選択肢がなかったから、わしに預けていかれた。そのくらい大事に思われておったんじゃ」(2枚目の写真)。「なら、行くべきじゃなかった。戻ってくると思う?」。鍛冶屋のビヨンは壁の方に向きを変え、返事をしてくれない。ハルダンは、天窓から見える月を見ながら女の子のことを想い、西の村でも、女の子は、母から、「明日は、大事な日。修道士が来られたら、あなたにも重要な役目があるわ」と言われても、窓から見える月を見て、昼間の男の子のことを思い想っている。

翌日、ビヨンがハルダンに鞴(ふいご)で風を送らせ、火力を上げている(1枚目の写真)。力仕事が一段落すると、何かを食べている(2枚目の写真)〔族長の家より、食料事情は良さそう〕。そして、ビヨンに、「どうして、そんなに危険なことなのか分かんない」と話す。「ハルダン、よく聞け。お前には、3つのことを誓ってもらう。その1。絶対に川を渡るな。その2。絶対に川を渡るな。その3。絶対に川を渡るな」(3枚目の写真、ビヨンの指が3の形になっている)「分かったな?」。「いいよ」。「絶対だぞ!」。「うん、って言った」。

西の村に、修道僧が馬に乗ってやってくる(1枚目の写真、矢印)。それを迎える族長のオーラリックと奥さんの服装は、東の村より遙に立派だ(2枚目の写真)。そこに現れた例の女の子は、修道僧に向かってラテン語で「Salve(今日は)」と呼びかける。そして、「In via bona(道中つつがなく)?」とも。それを聞いた父のオーラリックは、「何を言ってるんだ?」と、横にいる奥さんに尋ねる。女の子は、修道僧へのプレゼントとして、自分で作った木の笛を渡す。修道僧は、オーラリックを向いて、「Pax vobiscum(平安のあらんことを)」と言うが、意味の分からないオーラリックは、僧と同じように 掌を相手に向け、聞き取れた「Pax」だけを口にする。

映画では、順番が逆転するが、東の村の子供たちが、No.2の指導でやらされる体力訓練を兼ねた遊びの場面を先に紹介する。訓練の最後に、キツネ狩りという遊びをやることになり、足の悪いハルダンも参加するよう言われる。お尻にキツネの尾を付け、全員が東か西かに分かれ、たくさん尾を獲得した方が勝ちという遊び。他の子より体が一回り大きい男の子がいて、集中的に尾を集めてしまう。当然、ハルダンの尾も取られてしまうが、相手が得意がっている隙にハルダンが尾を奪う(1枚目の写真、矢印は奪った尾)。しかし、それに気付いた卑怯な男の子は、ハルダンを地面に突き倒す。「何、するんだ?」。「二度と俺の尾を取るんじゃないぞ、このチンバ!」。「放せ!」。「お前は、ホントのバイキングには絶対になれん。お前は、半人前のバイキングなのさ、この見下げはてたチンバめ!」(2枚目の写真)。この状態を見たNo.2が、「おい、何しとる?」と注意する。卑怯な男の子は、「こいつがインチキを」と平気で嘘を付く。No.2は、ハルダンに訊きもせず、「足が不自由だからといって、インチキはいかん」と叱る。失望したハルダンは、何も言わずに、その場を逃げ出す。“卑怯な男の子” は、No.2の息子か? それならピッタリだ。

キツネ狩りの前に、ハルダンと鍛冶屋の相棒(エスペン)との会話がある。その中で、「エスペン、僕が、誰かと連絡を取りたいと思ったら… 会いたいと思ってる遠くにいる誰かと…」と、遠回しに訊くと、エスペンは、「狼煙(のろし)じゃ。いつも旨くいく」と教える(1枚目の写真)。この後に、キツネ狩りのシーがあり、抜け出したハルダンは、集落を囲む木の防御壁の下に開けた小さな穴から外に出る(2枚目の写真)。その頃、西の村では、オーラリックの奥さんが、娘に向かって、「王女になることは、楽しいだけじゃなく、責任も伴うのよ」と話し、それに対して、娘は、「王女なんかになりたくない」と反論する。「でも、あなたの父さんは、もう決めたの」。怒った娘は、2階に逃げて行く。ハルダンは森を抜け、見晴らしのいい高台までくると、枝葉を集めて火を起こすが、予想外に燃え拡がってしまう(3枚目の写真)。

2階で王女の服を着せられた “例の女の子” が、何気なく窓〔ガラスは はまっていない〕の外を見ると、草地が燃えているような煙が見える。そこで、それが “狼煙” だという自覚はなしに、王女の服装のまま渓流の岩盤を登り、東の森に入ると、そのまま丘の上まで駆け上がる。そして、あちこちに火が燃え広がって困っているハルダンの所まで行くと、大事なコートを脱ぎ、それで火を叩いて消す(1枚目の写真)。消し終わった後、疲れた2人は、草地の上に座り込む。ハルダンは、思わず、「旨くいった」と呟く。「何?」。「ううん、何も」(2枚目の写真)。「どうしたの?」。「狼煙を上げようと思ったんだ。旨くいくと思ってなかったけど、こうして 一緒に座ってるよね」。「豆粒みたいな脳みそね」。「僕、君の名前が知りたかっただけなんだ」。「メイヤよ」。「僕、ハルダン」。「頬に何か付いてる。血が出てるわ」。メイヤは、ハンカチで血を拭いてくれる(3枚目の写真)。その時、東の村から、祭事用の金属板を叩く重い響きが聴こえてくる。「あれ何?」。ハルダンにも分からない。そこで2人は調べに行くことに。

2人が近づいていくと、村人が全員集まっていた。メイヤ:「何してるの?」。ハルダン:「神々に、食べ物を与えて下さいって頼むんだ」(1枚目の写真)。族長のラグナルは、「フレイヤ〔豊穣の女神〕よ、あなたの寵愛の印をお示し下さい」と叫ぶ。それを聞いたエスペンは、ビヨンに、最後の羊を食べずに殺すなんてバカげてると、小声で不満を漏らす。No.2が剣を抜き、羊の首を切り落とそうと振りかざすと、急に雷鳴が光り、No.2は思わず空を見上げる(2枚目の写真、矢印は生贄の羊)。その隙に羊は逃げ出す〔大事な食料を無駄に殺すな、というフレイヤのお告げ?〕。村人からは一斉に飢えと、族長の無策に対する不満の言葉が投げかけられる。ラグナルは、「戦争はせん。神に頼るしかない」と、意味のない言い訳をする。それを聞いたメイヤは、「食べるもの全然ないの?」と訊く。「ないよ。村中が飢えてるんだ」。「考えがあるわ。来て」。「どこに行くの」。「まぁ見てなさい」。

メイヤは、川が非常に狭くなった所で、深い淵の上に置かれた石を渡る。ハルダンは、「絶対に川を渡るな」と言われ、それに対して同意もしたので、渡ることができない。メイヤは、「これを一緒にやるなら、お互いを信頼しないと」と言うと、掌(てのひら)に唾を吐き、その手をハルダンに差し出す。「何なの?」。「掌に唾を吐くのよ。時間を無駄にしないで!」。ハルダンが自分の掌に唾をポタポタ落とすと、メイヤはその手をさっと握り、「誓いましょ。絶対に裏切らないって」と言う。こうして、ハルダンは、メイヤに手を引かれて淵を渡って西の村に入る(1枚目の写真、矢印は繋がれた手)。2人は村の柵に隠れて様子を窺う。ちょうど、修道士が 仮設の教会に案内されて行くところだった。ハルダンは、「君たち、いつもあんな服着てるの?」と訊く(2枚目の写真)。「ううん。キリスト教の儀式だからよ」。教会の壁には、十字架が逆さまに取り付けられていて、修道士に逆だと指摘される(3枚目の写真、矢印)。

メイヤは、ハルダンを、村の食料貯蔵庫に連れて行く。入口には見張りがいるので、屋根の窓に梯子を立て掛けて侵入する(1枚目の写真、矢印)。中に入ったハルダンは、食料の山にびっくりする(2枚目の写真)。「お腹が空いてるなら、食べて」と言われ、さっそく木の実やリンゴにかぶりつく。「これだけあれば村中が飢えないね」。2人は、運べるだけの食料を盗み出し、村の中をこっそり抜けて行く。その途中、ハルダンは一軒の家の窓から中を覗き見し、独りになった修道士が、ラテン語で、「恵みに満ちたマリア様…」と言いながら、メイヤから贈られた木の笛を2つに折るところを目撃する〔なぜ、折るのだろう? 悪人だということを早く観客に知らせたいため?〕。次のシーンでは、食料を乗せた木の枝を2人で担いで渓流沿いに歩いて行く姿が映る(3枚目の写真、東の村に入っている)。「食べ物がなくなったこと、気付かれないかな?」。それに対するメイヤの返事はない。隠し場所は、ハルダンの方が詳しいので、岩の下の洞穴に入って行く(4枚目の写真)。「どう思う?」。「そうね、うまくいくんじゃない?」。「村人にパーティを開いてあげられるね」。

2人は、その後も、食料の略奪を続け(1枚目の写真)、洞穴の中が貯蔵庫らしくなってくる(2枚目の写真)。順序は逆転するが、最後には、3枚目の写真のようになる〔西の村の食料貯蔵庫は空になる〕

2人は、食料を運ぶだけでなく、メイヤはハルダンに弓の扱い方を教える(1枚目の写真)。この辺りも、順序はやや逆転するが、弓矢についての進展をまとめると、メイヤが付き添って狙いを定め、標的の袋を射抜くまでに上達する(2枚目の写真、矢印は刺さった矢)〔コマ送りして確かめると、本当に矢が飛んでいって刺さっている〕。刺さったのを見た2人は大喜び(3枚目の写真)。

弓の練習と重なりつつ進行するのが泳ぎの練習。ハルダンは、平泳ぎの手の動かし方を習い(1枚目の写真)、そのまま川に入って行くが、見事に失敗して、また溺れかかる(2枚目の写真)。しかし、弓が成功した後のシーンでは、2人並んで泳ぐことができるようになっている(3枚目の写真)〔こうやって見てくると、貢献する側は常にメイヤ、貢献される側は常にハルダン〕

ここで、族長ラグナルの奥さんと、隣合って洗濯物干しをしている別の女性〔年齢が少し上〕の会話が、後に関係するので、紹介しておこう。奥さん:「ラグナルは、オーラリックより弱く見えるくらいなら死んだ方がマシだって思ってるわ」。女性:「頑固な年寄りたちね!〔バイキングの平均寿命は40-45歳(デンマーク国立博物館の資料)〕。昔は違ってたわ。男たちには責任感があった。今は、ただの穀つぶし」。「ラグナルそのものね」。「昔、女たちは、男たちとは離れて暮らして、仕事を分担してたの。1週間男たちはどこか他で暮らし、次の1週間は女たちがそうしてた。だから、家で子供の世話をするのも交代だった」。「洗濯も?」。「すべてよ」。この言葉から、ラグナルの奥さんは、自分だけが子供の世話をし、洗濯をさせられていることに怒りを覚える。一方、ハルダンは、東の村の族長の家の近くまでメイヤを連れて来る。家の脇の樽には、塩が山盛りになっている。「塩がたくさんあるのね。あんなに、何に使うの?」。「何にも。食べ物がないから、使い途がない」〔後で、西の村は塩がなくて困っていることが分かる〕。ハルダンは、自分の家を見て、「あそこにある小さな家、見える? 僕、ビヨンと あそこで暮らしてるんだ」と教える(1枚目の写真)。「ビヨンがお父さん?」。「ううん。一緒に住んでるだけ」。「両親は?」。ここまで話した時、ラグナルと奥さんが現われる。「族長は、責任を取らなきゃならん。俺は、東の村全体の父親みたいなもんだ」(2枚目の写真、矢印は塩の山)。奥さんは、さっそく反撃を開始する。「私たち、すべて分担しましょ」。「どういうことだ?」。「家事、責任、食事の提供を分担するのよ。1週間、あなたが子供の面倒を見る。私は好きなことができる。次の週は、私が子供を預かる。そしたら、村の長(おさ)になれるでしょ。村人全員が餓死する前に、あなたの部下を食料調達に出しなさいよ」。ちょうどそこに、老婆がやって来て、「屋根が壊れたわ。直して頂戴な。あんたに最終的な責任があるんでしょ」と文句を言う。如何にも、今日的な発想の展開だ。

2人は、森の中を話しながら歩いている。メイヤ:「じゃあ、あなたの村は、塩はあるけど、食べ物がないのね。私たちの村では、塩がないから生ものがすぐ腐るの。正気じゃないわ!」。ハルダン:「東に食べ物、西に塩が入れば、もう一度仲良くなれる」。「そうだといいわね」。「じゃあ、明日」。ここで、メイヤがハルダンを呼び止める。そして、弓と矢と矢筒を渡す。「これ君のだろ?」。「もっと持ってるから」(1枚目の写真)。メイヤは、ハルダンの首に弓をかけるが、まるで抱いているように見える(2枚目の写真、矢印は矢)。そこに、お邪魔虫からの咳払いが聞こえる。ラグナルの小さな娘だ。メイヤはびっくりして離れる。ハルダン:「ヒルダ!」。「何してるの? その子、誰?」。ハルダンは、西の村の族長の娘とは言えないので、「彼女には、君の言葉が理解できないんだ」と嘘を付く。「別の言葉を話すの?」。「i語(i-språket)しか話せないんだ」(3枚目の写真)。そう言うと、メイヤに向かって、適当に、「Illir hir?」〔「だよね(Eller hur)?」を訛ったもの〕と、iの字がたくさん入った捏造語で話しかける。さらに、「Di pritir biri i-sprikit」〔「君はi語しか話せない(Du talar bara i-språket)」を訛ったもの〕と話かけ、メイヤも調子を合わせて、「Ji. Pricis」と答える〔「その通り(Ja. Precis)」を訛ったもの〕。そして、「Vi sis i mirgin」〔「朝、会いましょ(Vi ses i morgon)」を訛ったもの〕と付け加える。メイヤが去った後、ヒルダは、「あたしも、秘密の言葉話したい」と言い出す。ハルダンは、「彼女に会ったこと、誰にも言わないって約束したら、i語を教えてやる」と懐柔する。

ハルダンが家に帰って来ると、ビヨンとエスペンがボードゲームをしている。そこで、ハルダンは弓と矢筒を背中に隠して中に入って行き(1枚目の写真、矢印)、ベッドの下に隠す。「何をこそこそやっとる?」と訊かれても、「何も」と否定する。「川に行ってたのか?」。「お腹が、変な感じがする」。「病気なのか?」。「ううん。何か もぞもぞするの。チョウチョが飛んでるみたい」(2枚目の写真)。「腐った魚を食べたんじゃ」。エスペンは、「好きな子ができたんだろ」と、正しく判断する。

西の村では、夜になり、盛大な食事会が催される。食料はすごく豊富だが、オーラリックは、口に入れた魚を吐き出し、「王(konung)に、こんな物が食えるか」と文句を言う〔族長ではなく、王という言葉を使っている〕。奥さんは、「自分で作ったら」と、こちらも、東の村の族長の奥さんと似て、旦那に対する態度は厳しい。そして、「塩よ! 保存するには塩が要るわ」と指摘する。「そんなものはここにない」。ここで、メイヤが発言する。「ラグナルに頼んだら?」。その “にっくき” 名前が出ると、部屋の中は静まり返り、オーラリックはナイフをテーブルに突き刺し、「俺の家で奴の名前を言ったのはどいつだ?」と、ドスを利かせて訊く。メイヤは、「私よ」と手を上げ(1枚目の写真)、「あの人たち、絶対に分けてくれるわ」と言う。娘なので怒鳴るわけにもいかず、オーラリックは、「東の村に塩があるとなぜ知っとる?」と訊く。「誰だって知ってる。私たちが大きな村だった時、塩はみんなの物だって聞いたわ」。「ラグナルが塩を独り占めしとるせいで、俺は腐った魚を食わされる」。食事会が終わった後、母と2人きりになったメイヤは、「なぜ友だちになれないの?」と尋ねる。「誰と?」。「東の村と。みんなバイキングじゃない」。「違い過ぎるのよ」。「違ってるかもしれないけど、不快じゃないわ」。「私が、あなたくらいの年頃だった時、東の村にお友だちがいたわ。一番の仲良しだった。でも、今は… 神が禁じておられるの… 分かる?」。「もう仲良しよ」。母は、その言葉に驚く。「今、何て言った?」。「東の村の男の子と会ってるの」(2枚目の写真)。「気でも触れたの? お父さんが何て言うか、考えたことある?」。「お母さんだって、友だちだったんでしょ?」。「今度また話し合いましょ」。

翌日、バイキング・シップの出航準備が進められている。ラグナルは帆桁の上に立ち、「悪魔どもに、東の鋼(はがね)を味わわせてやれ!」と大声で鼓舞する(1枚目の写真、矢印)。当然、ラグナルは先頭に立って出陣するつもりだった。そこに、子供たちを連れた奥さんが駆け付ける。「どこに行くの?」。「略奪だ」。「ダメ。あんたは家にいないと」。「どういうことだ?」。「略奪をするのは、あんたじゃない」。そう言うと、奥さんは、「子供たち、父さんと一緒にいなさい」と、長女と次女に言い、「ヒルダは森よ」と夫に言い、さらに、「フローは もうすぐウンチよ」と言って抱いていた赤ちゃんを渡す。「みんな何も食べてないわ。じゃあね」。ラグナルは、出航を間近に控え、子供たちの世話を押し付けられた。「フリーダ!」と妻の名を呼んでも、振り返ってはくれない。2人の子供に挟まれ、赤ん坊を抱いたラグナルを残して、船は出て行く(2枚目の写真)。面目丸潰れだ。

一方、鍛冶屋の家では、ハルダンが、朝寝坊して起きてくる。「お早う、お若いの。よく眠ってたな。お腹の具合がいいんなら、朝飯があるぞ」(1枚目の写真)〔前もそうだったが、族長の子供に食べ物がなくて、なぜここにはあるのだろう?〕。「いいよ、急ぐから」。そう言って、出かけようとする。ビヨンは、ハルダンを呼び返し、「お前が 何をしとるのか、知りたい」と言うが、「後で話すよ。心配いらないから」(2枚目の写真)と言うと、そのまま出かけてしまう。しかし、ハルダンが洞穴まで行くと、メイヤはまだ来ておらず、逆に、お邪魔虫のヒルダが近くにいる。「ここで、何してるんだ?」。「Priminirir. Vir ir din vin?〔「歩き回ってる(Promenarer)」/「お友だちはどこ?(Var är din vän?)」を訛ったもの〕。「ここじゃない。行くぞ」。

その頃、メイヤは、貯蔵庫に残った最後の食料を籠に入れていた。そして、村を出ようとすると、修道士に呼び止められる。「どこに行く? すぐに礼拝が始まるぞ」。「イノシシにあげるの」。「君のお父さんが、村人全員がクリスチャンになるべきだと決意を表明される時、その場にいることはとても重要なことなのだ。来なさい、メイヤ」(1枚目の写真)。そして、メイヤを母の前に連れて行くと、「Fräulein〔お嬢さん、ドイツ語〕が、儀式から逃げようとしていました」、と注意する。森の中では ハルダンが待ち続けるが、ヒルダがまとわりついて離れない。そのうち、嫌気がさしたハルダンは、ヒルダを残して家に帰ってしまう。修道士は、母に向かって、「私は、お嬢さんをザクセンの修道院に連れて行きます。そこで、素晴らしい王女になるでしょう」と言い出す〔父のオーラリックには、前夜了解を取っておいた〕。母は、その提案に疑問を投げかける。その話を窓から聞いていたメイヤは、扉を開けると、「誰とも話す気なんかない! 修道院なんか絶対行かない!」と吐き捨てるように言うと(2枚目の写真)、そのまま弓矢だけを持って村から出て行く。

一方、家に帰ったハルダンは、ベッドの下に隠した矢筒が見つかってしまう。ビヨンは、羽根の色から、「これは西の矢だぞ」と、問題視する。「もし、これが見つかったら、どうなるか分かっとるのか?」。「メイヤから もらったんだ」。「それは誰じゃ?」。「誰にも言わないって約束して。全部ダメになる。僕たち、西の村から食べ物を運んで来たんだ。もう飢えなくて済む」(1枚目の写真、矢印は青い羽根)。「盗んだのか?」。「違うよ。メイヤがくれたんだ。向こうに住んでるから。最初は、僕を溺れさせたんだけど、食べ物がないってこと知ったら…」。「遊びじゃないんじゃぞ! 分からんのか? その子は、お前を騙しとるんじゃ。何もかもオーラリックに筒抜けじゃぞ。どんな仕打ちに遭うと思う?」。話がここまで進んだ時、メイヤがハルダンを探して家までやってくる。「西の奴と一緒に盗んだなんて、一体何を考えとった?」。「じゃあ、メイヤは、西の村の攻撃の口実に、僕を使ったの?」。その言葉を、メイヤが聞いてしまう。「西の奴らがすることは2つだけじゃ。騙すことと闘うこと。信用するんじゃない」(2枚目の写真)。それを聞いたメイヤは、思わず、「何ですって?」と呟いてしまう。その言葉を耳ざとく聞きつけたハルダンは、「メイヤ?」と驚く。そして、「何てことしたの」とビヨンを責めて、後を追おうと立ち上がる。「行くんじゃない」。ハルダンは、「僕に指図するな! あんたは、父さんじゃない!」と、突き放すように言うと、扉を開け、「メイヤ、待って!」と叫んで走って行く。

メイヤは、浜辺まで走って行き、丸太の上に座る。ハルダンは、砂浜に辿り着き、「説明させて」と声をかける。メイヤは、「こんなの初めからバカげてた。友だちになんか なるんじゃなかった。お互い信頼し合ってると思ってたのに」と、不満をぶつける。ハルダンは、「信頼してるよ」と言って、隣に座る。「私のことを勝手に決める両親なんか要らないわ」。「僕は、両親が欲しいよ」。「私を修道院に入れようとするのよ」。「何だって? なら僕も一緒に行くよ。一緒にいられないのなら、ここにいても仕方ないから」(1枚目の写真)「船で海に出たらどうかな? 船のことなら任せて。僕の血筋なんだ」。「そうなの?」。ハルダンは掌に唾を吐き、差し出す。メイヤも唾を吐いて、その手を握る(2枚目の写真、矢印)。そのやりとりを森の中から窺っていた “卑怯な男の子” は、2人がいなくなった後で、青い羽根の矢を1本見つけ、さっそくラグナルにご注進に行く。しかし、ラグナルは赤ん坊の世話でそれどころではなく、告発は聞いてもらえない。

その夜、2人は、それぞれの家から抜け出す(1・2枚目の写真)。写真は分かりやすいように増感してあるが、実際はもっと真っ暗。ハルダンは、洞穴に立ち寄り、必要な食料を袋に詰める。森の中が朝日で明るくなった頃、2人は森の中で出会い、港へと向かう。

そこは、以前、ラグナルを乗せずに バイキング・シップが出航していった場所。ハルダンは、小さな舟に乗って出発する(1枚目の写真、背後の石積みの防波堤(?)が、ラグナルの時のものと同じなので、出航した場所だと特定できる)。メイヤは、「帆がなくていいの?」と心配するが、ハルダンは、「何とかやれると思うよ」と答える。しかし、マストの前には帆が畳んで置いてあった。「嘘みたいな幸運! 本物のバイキングは、運も味方につけるんだ」と言い、帆桁に帆を張る。ハルダンは、父からもらった “皮に描かれた地図” を取り出して見る。メイヤ:「それ、信じてるの?」。「もちろん。父さんが直々に作り、僕にくれたんだ」(2枚目の写真)。「お父さんはどこ? それに、お母さんは?」。「母さんは、いつかの冬にひどく咳いて、眠ったら起きなかった。父さんは、どこかにいる」。「いつ別れたの?」。「8年前〔ハルダンは12歳なので4歳の時〕。「また会おうって約束したんだ。海については何でも知ってた」。そこまでは良かったが、舟はハルダンが思ったようには動いてくれない。「小さな舟に慣れてないんじゃない?」。「そんなことないけど、確かに、少し小さ過ぎたのかも。これじゃ手漕ぎのボートだものね」。舟が思ったように動いてくれないので、ハルダンはあきらめて、船首に横になる。「家じゃ、みんな何してるかな?」(3枚目の写真)。「食べ物、見つけちゃったと思わない?」。「きっと、2つの村は友だちになるよ」。

このシーンの前に、メイヤの家では、いなくなったことがバレてしまう。一方、お邪魔虫は、洞穴の前にソーセージが落ちているのを見つけ、中に入って行ってしまう。そして、大量の食糧を見つけ、父と母にご注進。ラグナルと奥さんは洞穴に急行する(1枚目の写真)。単純なラグナルは、勝手に神からの贈り物だと決めつけ、「ありがとう、フレイヤ」と言う。奥さんは、常識的な思考から 「誰かの所有物よ」と言うが、そんなことは耳に入らない。一方、西の村では、食料貯蔵庫に何かを取りに入って行ったオーラリックが、空っぽなのを知り、怒り心頭で出てくる(2枚目の写真)。そして、犯人は東の村に違いないと思い込む〔「きっと、2つの村は友だちになるよ」は、真逆になってしまった〕。ラグナルは、荷車に、洞穴にあった全食料を積んで村に戻る(3枚目の写真)〔必ず所有者がありそうなものを、全部盗んでくるとは、非常識にも程がある〕

食料の山を見て、村人が集まってくる。ラグナルは、自分が勝ち取ってきたように意気揚々としているが、奥さんは 「誰のものか調べなくていいの?」と心配する。その時、“卑怯な男の子” が、「オーラリックが族長と話したがってるよ。橋のところで待ってる」と伝える。奥さんは、すぐに不安になる。「少し変じゃない? 最初に食べ物、そして、今度はオーラリック」。2人は、真ん中が抜け落ちた橋の両側に向かい合って立つ(1枚目の写真)。オーラリックは、「食料を返せ! そして、跪いて謝罪しろ!」と要求する。「何の食料の話だ?」。「お前が俺の倉庫から盗んだ食料だ! 返さないなら、奪い返しに行くぞ!」。ラグナルは、まともに相手にならずに背を向ける。しかし、自分がした愚かな行為に対する認識はあったようで、荷馬車まで戻ってきて、運んできた食料が村人に奪われて消えてなくなっているのを発見すると、困惑する(2枚目の写真)。村人全員が集められ、No.2が、「罪の覚えのある者は、一歩進み出よ」と叫ぶ〔勝手に盗んだラグナルに罪が あるのに、そのことは不問に付している〕。誰も動かないので、「では、我々は、間違って罪を被せられたことになる」。ビヨンは、「もし、奴らが攻めてきたら、どうなるんじゃ? 軍勢は送り出してしまったぞ」と問う。心配は、他の村人の間にも拡がる(3枚目の写真)。ラグナルは、「命ある限り村を守るしかない。できんのなら、東の村は終わりだ」と、答える。集会の後、“卑怯な男の子” は、ラグナルに会いに行く。「チンバが関係してるのかも。知らない女の子と一緒だった」。「何を見た?」。「2人は岩のところで握手し、森の中に消えた」。「ガキを見つけ出そう」。一方、西の村では、メイヤの母が捜し回ったが 娘がどこにもいないので、オーラリックに報告に行く。オーラリックは、修道士と話し込んでいて、まともに聞こうとしない。修道士は、「よい機会ですぞ。あなたは、クリスチャンとして、2つの村の王となることができます」と唆(そそのか)す(4枚目の写真)。まともな奥さんは、「あなたの兄さんなのよ」と言うが、修道士は、「最後通告を与えるのです。1日のうちに、盗んだ物を返すよう」と、悪知恵を授ける。軽薄なオーラリックは、策士の罠にはまって、修道士の言う通りにする。「それからどうする?」。「東の村をあなたの物にするのです。永遠に」〔この映画で最大の悪役は修道士〕

小舟に乗った2人の方は、日が暮れても波に揺られて漂う状況は変わらない。ハルダンが、「きっと、そんなに遠くないよ」と言うと、メイヤは、「真っ暗で、どこにいるかも分からないじゃないの」と不満をぶつける。ハルダン:「戻った方がいいかも」(1枚目の写真、増感)。「地図なんか見るの止めたら? 使い物にならないわ」(2枚目の写真、増感)。「僕の父さんが…」。「あなたの父さんなんか、もう うんざり! 8年間もいないのよ。もう死んでるわ!」。そう禁句を言い放つと、羽織るものを集めて舟の前部に横になる(3枚目の写真、増感)。最後の言葉にカチンときたハルダンは、「ビヨンは正しかった。西の奴らは信用できない!」と、これまた禁句。メイヤは、「なら、東の人とだけいりゃいいでしょ!」と反駁。「僕ら、会うんじゃなかった!」。「こっちもそうよ。一人の方が良かった!」。「僕もさ!」。狭い舟の上での大喧嘩だ。

夜明けとともに、小舟はいつしか沼のような所に漂着する(1枚目の写真)。先に目を覚ましたハルダンは(2枚目の写真)、「メイヤ、起きて」とだけ言うと、一人、舟を降りて森に入って行く。

小舟が着いた岸は西の村の側だったらしく、ハルダンが森を抜けると、そこは西の村だった。ハルダンが驚いている間に見つかってしまい、捕まってしまう(1枚目の写真)。そして、牢屋のような場所に放り込まれる(2枚目の写真)。ハルダンは、「待って、ちゃんと説明するから、戻って来て!」と呼びかけるが、白樺の木でできた格子には錠が掛けられていて出られない(3枚目の写真)。

一方、メイヤも同じように村に辿り着き、家に戻ったので、心配していた母に抱きしめられる。母は、朝食を用意しながら、「海で、何をするつもりだったの?」と尋ねる。「逃げようとしてたの」(1枚目の写真)。そして、さらに、「最悪だったわ。一番の友だちだと思ってたのに、けんかを始めちゃった」と告白する。母も鷹揚で、「それが友だちよ。喧嘩しては仲直りするの」と慰める。「私、いっぱい悪いこと言っちゃった。その気じゃなかったのに。もう許してくれないわ」。「もちろん、許してくれるわよ」。「彼なしで 生きてたくない」。母は、その言葉に感動する。「ハルダンにまた会いたいのね?」(2枚目の写真)〔バイキングの女性は、早ければ12歳で結婚した。ちょうどメイヤの年齢/出典はHistory on the Net〕

ラグナルとオーラリックの2回目の “怒鳴り合い” で、オーラリックは修道士に唆されたよう要求する。「日没までに俺の食料を返せ! さもないと、お前の村はなくなるぞ!」。西の村に帰ったオーラリックは、「何で奴は ちょっかいを出したんだ!」と、母と娘の前で、剣でキャベツを何度も突き刺して怒りを爆発させる。その時、扉が開き、部下が、「東の村の小僧を捕まえました」と報告する。その言葉に、メイヤはハッとする。その頃、牢の前では、太っちょの番人が、「今なら、牢の中で座ってても苦にならん。冬だと辛いぞ」とハルダンに話している。この話好きは、そのあと、重要な情報も与えてくれる。「もうすぐ、ラグナルも来るから、独りじゃなくなるぞ」。「ラグナルが? なぜ?」。「奴は、オーラリックの食料貯庫を空にしたんだ。日没までに返さなかったら、俺たちは東の村を乗っ取る」(1枚目の写真)「ただし、オーラリックの気分次第だがな。彼は、勝てない戦いは絶対やらないんだ」。「そんな、まさか」。「その、『まさか』なんだ」。ハルダンがふと見上げると、そこには、錠の鍵がぶら下がっている。そこで、気のいい番人に、「僕、すごく喉が渇いちゃった。何か飲み物 もらえない?」と頼む。「お前は、東から来たにしては いい子だから」と言って番人は井戸に向かう。その隙に、ハルダンは、牢の中にあった木片を使って鍵を奪い、錠を開け(2枚目の写真)、逃げ出す。だから、オーラリックが “東の村の小僧” を検分に来た時には、牢はもぬけの殻だった。「囚人が逃げたぞ!」の声に、メイヤはホッとする。

ハルダンは、東の村の森まで逃げて行き、沢で喉を潤していると、そこにお邪魔虫が寄ってくる。洞穴に隠した食料をオーラリックに返そうと中に入って行くが、そこには何も残っていなかった。「なくなっちゃった… どうして?」。一緒に付いて来たお邪魔虫は、「みんな食べちゃった」と言って、お腹を叩く。そんなことになるとは想像だにしていなかったハルダンは、びっくりする。そして、ビヨンに会いに行く。ハルダンに「あんたは、父さんじゃない!」とまで言われたビヨンだったが、彼は、再会を心から喜んでくれる。「どこにいたんじゃ?」。「僕、すごくバカなことしたみたい」(1枚目の写真)。ビヨンは、“バカなこと” については訊かず、「怒ったりして悪かった」と謝り、ハルダンも、「僕も、バカだった」と謝る。「お前は正しい。わしは、お前の父さんじゃない。時々、そう感じたにせよじゃ」。ハルダンは、さっそく、番人から聞いた機密情報をビヨンとエスペンに話す。「オーラリックは、2つの村の王様になろうとしてるんだ。でも一ついいことを聞いちゃった。オーラリックは、勝てない戦いは絶対やらないんだって」(2枚目の写真)。「『いいこと』? 何も変わらんじゃないか?」。「変わるんだよ。2人が手伝ってくれれば」。No.2は、老人や老女に戦闘訓練をしているが、誰もが絶望的だ。そこに、エスペンがやってきて、「防衛について、いい策があるんじゃが」とラグナルに話しかける。No.2は、「防衛だと? それには、これしかない」と斧を振りかざすが、ラグナルは、「黙っとれ。どんな策だ?」と乗り気になる。一方、メイヤは、村中で戦(いくさ)の準備が進んでいるのを見て、「何が起きてるの?」と部下の1人に訊く。「東の村の奴らが、我々の食べ物を盗んだ」。驚いたメイヤは、誤解を解こうと父に会いに行くが、途中で修道士に父の居所を尋ねたのが災いとなった。せっかく始まった戦いを、“誤解” で済ませてはならんと思った修道士は、メイヤを仮設教会に誘い込むと、外から鍵をかけて閉じ込めてしまう。東の村では、ビヨンは、先端がZ字のように曲がった鉄棒の製作に励み、エスペンは、長い木の棒や、鉄兜とキャベツの収集に努める。鉄棒の先にキャベツを刺し、それに鉄兜を被せ、“多数の戦士がいる” と見せかけ、オーラリックに戦いを躊躇させようとする策略だ。それでも、ハルダンは心配する。「もし、失敗したら、全部 僕が悪いんだ」。しかし、ビヨンは、「お前は、どこも悪くない」「2つの村が仲違いしたのは、わしのせいじゃ」と言い、箱の中に隠してあった魔法の斧を出して見せる(3枚目の写真、矢印)。「わしは、正しいことをしてると信じ、前のお頭(かしら)が亡くなった時、これを隠したんじゃ」〔兄弟の間で紛争が起きた時、どうして出さなかったのか、説明は一切ない〕

夜になり、オーラリックの軍勢が、橋の対岸に集結する。ラグナルが合図をすると、角笛が吹かれ、それと同時に、偽装した兵士の頭部が木の柵の上に多数現れる(1枚目の写真、矢印)。防衛が完璧だと思ったオーラリックは、攻撃を躊躇する。しかし、運の悪いことに、高く上げ過ぎた人形の一体が柵の外に転落し、頭部からキャベツが転がり出る。これを見たオーラリックは高笑いし、「次に転がるのは、お前の首だぞ」と言い、剣を掲げて鬨(とき)の声を上げる。それに応え、部下全員が叫ぶ。これは拙いと思ったラグナルは、急いで柵の中に逃げ込む。対岸からは梯子が渓谷の上に渡され、その上を渡って敵軍が東の村に押し寄せる(2枚目の写真)。

ハルダンは、ビヨンの家まで走って戻ると、魔法の斧を取り出す。邪魔しようとやってきた “卑怯な男の子” に対し、ハルダンは斧を振り上げて迫る。怖くなった “卑怯な男の子” は、後ろに下がる時、間違って精錬用の水槽に落ちる(1枚目の写真)。これまで、さんざ意地悪をしてきたので、いい気味だ。ハルダンは、木の防御壁の下の穴から外に忍び出ると、橋の上まで走って行き、東の村の柵の門を破城槌で破り中に侵入した西の村の軍勢に向かって、斧を振り上げて叫ぶ。「僕だ! 盗んだのは僕だ!」。急に現れた “斧” にオーラリックは唖然とする。部下が、「彼奴(あやつ)です! 東の村の小僧です!」。「そうか? 奴を捕まえろ。死罪にする」。ハルダンは、斧を橋の欄干の外に出し、「一歩でも動いたら、手を放すぞ!」と警告する(2枚目の写真、矢印は斧)。そして、「これからは、お互い、助け合うんだ! 以前のように! 西のすべては東のもの。東のすべては西のもの!」と要求する。オーラリックは、「斧を寄こせ! 俺のものだ! お前の村に、俺の欲しい物などない!」と否定。ここで、バカなラグナルが口を出す。「俺も、同じだ!」。その言葉を聞いた奥さんが、「もう、うんざり! なぜ仲良くなれないの?! まともな考えができるのは、その子1人だけなの?! さあほら、2人とも握手して!」と強く夫を批判。オーラリックは、唾を吐くが、今度は、彼の奥さんの声が谷の反対側からする。彼女は、梯子を渡って夫の所まで来ると、「この頑固者! 子供じみた遊びはもうたくさん! 白紙の状態から始めましょ! 剣を寄こしなさい! 今すぐ!」と、2人に要求する。2人の奥さんは、それぞれの夫から剣を奪い取る。そして、お互いに握手させる。

その時、対岸から悪魔の声が聞こえてくる。「お前たちは、クリスチャンになるのだ! 全員だぞ!」(1枚目の写真)。その声に驚いて、ハルダンが振り向くと(2枚目の写真)、それは、メイヤを人質にした修道士だった。「神の偉大な計画は、子犬が如き者により破壊されるようなものではない! 斧をこちらに投げよ!」(3枚目の写真、矢印は修道士)。メイヤの母は、元々修道士が嫌いだったので、「娘を放しなさい!」と命じる。夫のオーラリックも、「修道士め! 後悔させてやるぞ!」と脅す。

それでも、修道士は、「斧をこっちに投げろ!」と再要求。メイヤは、「ハルダン、投げちゃダメ!」と叫ぶと、自分の体を捉まえている修道士の手に思いきり噛みつく(1枚目の写真)。痛さに手を放した修道士から逃れたメイヤは、そのまま谷に落下。ハルダンは、その場に斧を捨てると、「勝つためには、やらなくちゃ」と言い残し、谷に飛び込む。幸い、ハルダンは、メイヤから泳ぎを習っていたので、潜って行く(2枚目の写真)。メイヤの足が廃材に引っ掛かっていたのを外し、命を救う。2人は、水の中で見つめ合う(3枚目の写真)。

最後の場面は、どちらかの村で開催された祝賀会。両方の村の住民が一堂に会し、食べ物も大盤振る舞いだ(1枚目の写真)。ラグナルとオーラリックが並んで立ち、兄が「東の村に!」、弟が「西の村に!」と言い、乾杯する(2枚目の写真)。ハルダンは、ビヨンとエスペンのテーブルに呼ばれる。ビヨンは、前に座っている西の村の兵士に向かって、「これはわが子じゃ。こんな勇気は見たことがない」と自慢する。エスペンも、「2人の族長に1人で立ち向かとはな」と褒める。「お前こそ、真のバイキングじゃ!」(3枚目の写真)。

そこに、メイヤが呼びに来る。「一緒に来て」。2人は、海岸に行き、砂浜の上で焚火をたいて仲良く座る(1枚目の写真)。「僕たち、貸し借りなしだよね?」。「そう。おあいこよ」。「口に何か入れてよ」〔食べ物のこと?〕。その代わり、メイヤはキスする(2枚目の写真)。「ほら、あげたわ」。「また、海に出てみようか」。「やめとく」。「指揮をとるなら」。「なら、いいわ」。ハルダンがメイヤと結婚すると、将来、西の村の族長になるのだろうか?

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